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初登校! 初授業!! [英語留学(ダブリン2000)]

2000年1月10日 昼前
クラス分けが終わったらさっそくレッスンが始まった。日本人は他にふたり、どちらも女の子。レンツォはイタリア人とは話さないと言っていたけど、僕はふたりに英語で挨拶した。ふたりとも英語で返してくれて良かった。他には中国からの生徒がふたり、メキシコからひとり、イタリアからひとりだった…それにしてもケイトという先生が、若くて美人だから妙に緊張してしまった。

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筆者のクラスはIntermediate Class - すなわち中級クラスと決まった。それくらいで丁度いいのではないだろうかと思う。そういえば教科書とか持ってないなあ。持っているのは筆記用具、そしてポケット英英辞典だけだ。木のドアを開けて中に入ると、ひろびろとした天井の高い教室の中、視線が集まってきた。

左手に、すらっとした金髪の女性。ずいぶん若くて、そして美人だ。去年の2回の旅行で、アイルランド人もイギリス人もベルギー人も、白人だからといって皆が皆、100%美男美女ではないことを実感していたが、この人は美人である。そして満面の笑顔。

「Hi, you must be K! Welcome, my name is Kate. Pleased to meet you.」

あなたがKね、と言われたところからすると、先に新入生名簿みたいなのが廻っていたのだろう。挨拶を済ませて、席につくように促された。教室の反対側に首を向けると、そこには見慣れた「コ」の字型配置の机があり、そして、数人の人々が座っていた。

(この人たちがクラスメイトか)

ケイト先生の指示に「Yes」とぶっきらぼうに返事して(そんなつもりはなかったが、Yesの一言以上に気のきいたことは言えるわけがなかった)どこに座ろうかな、とゆっくり動きかけつつも、どの人の横に座ればいいのかでかなり悩んでしまう筆者であった。その時、ブロンドの女の子が目を合わせてきて、笑顔で「ここに座りなさいよ」と言わんばかりに隣の席を掌で軽く叩いた。勧められたら断らない筆者だったので、うなづいて彼女の隣に着席。隣に座った瞬間に驚いたのは、彼女の鼻と唇にひとつずつ通った銀色のピアスだった。


(不良…!?)


などとはさすがに思うわけもなかったが、あまりにも幼い顔立ちだし、体も小さいので、正直どうかなあと思った筆者であった。それにしても何歳だろうかこの子。でも女性に年齢を聞くのはどこの国でもタブーだろうなあ…

「Ai, I'm Cristina. I'm from Milano」

彼女の最初に言った言葉は「アイ」だった。「Hi」からHが取れて発音されたのだが、そこまでは気付かなかった。ただ漠然と、やっぱりイタリア語特有の訛りなのだと思った。発音そのものより、長くてなめらかで、歌うようなイントネーションのほうが印象に強い。彼女の名前はクリスティーナで、ミラノから来ているのだということ。あとで名前を書いてくれたが、それは何か違和感のある綴りだった。

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「Cristina」

授業の間は、どこが違和感の源なのか考えるどころではなかったのだが、後で気付いた。英語で「クライスト」(救世主、日本語で言うキリスト)と書くときはChrist、「H」が入っている。Cristinaの名前にはそれがない。イタリア語は勉強したことがないけれど、やっぱり英語とは違うものなんだろうなあ、と思った。

アウ・オルド・アール・ユー?」
(How old are you?)

また最初のHが聞こえなかった。それに「are(アー)」の後ろに重いアクセントがあって、「アール」に聞こえる。しかし質問の意味を間違えたりはしない。

「I'm 23 years old」
「リアァリィィィ、アイム・トウェンティ・フォォォル」(Really, I'm 24)

また最後の「four(フォー)」が「フォール」に聞こえる。ってええっ!? この子年上なのか? いや、年上だったら「子」というべきではないのだが…

「You look young!」
(若く見えるね)

そう言おうと思っていたらクリスティーナに先に言われてしまう筆者であった。「You too」と返して、二人で少し笑った。その時ケイト先生の声が響いた。どうやら筆者が席に落ち着くまで待っていてくれたらしい。

生徒が「コ」の字型の配置の机に座って、ネイティヴの先生を3方から包囲する形の授業は、日本の大学であったので慣れている。しかし今日からのレッスンは、同級生がほとんど全部外国人というところが最大の違いだ。大学の時は、自分以外のほとんど全員が、ほんの一瞬の隙でもあれば日本語で答えを聞いたり雑談したりという感じだったが、ここではそんなことはできないのだ。英語しか使えない英語のレッスン、どれだけこれが受けたかったことか。

最初のレッスンで最初にしたことは、Introduce yourself -「自己紹介」である。新しく入ってきた筆者のためにわざわざやってくれるとは、ありがたい。順番は端からだった。

ヘスス、メキシコ人。18歳、高校を出たばかりの男の子。輪郭も目も全体的に丸っぽく、柔和な印象。話し方も大人しい。すかさずメモを取った時にヘスス=Jesusというスペイン語のつづりがわからなくて「Hesus」と書いてしまった。

ハナさん(仮名)。日本人、21歳、大学の休みを利用して留学、今日が初日…ってあれ? すでに席についていたから気付かなかったが、筆者と同じ新入生である。筆者と違ってちゃんと授業料の支払いを先に済ませて入学したのだろう(おそらくは留学エージェンシーを介して)。とてもおとなしいというか、緊張して萎縮してしまっているのがよくわかった。

マホさん(仮名)。日本人、24歳、長期留学中。こちらはハナさんとは打って変わっておちついている。筆者はそのとき「海外に住み慣れた日本人」というと、ビシッとして揺るがないタイプ、という先入観があったが、この人は全然違う。リラックスしているのだ。緊張も何もしていないし、する必要もないということだろう。初日で不安なハナさんは、率先して唯一の日本人(だった)マホさんの隣に座ったに違いないぞ、と思った。

中国の人は男女ひとりずついて、女性の方はリリー(Lily)と名乗った。温和そうな顔で、眼鏡をかけていて、学校教師っぽい雰囲気だ。

中国人の男性の方はジョン(John)と名乗った。こちらもおとなしく、中肉中背、姿勢も正しく服装も清潔で、育ちがいいことが良く分かった。それにしても、韓国人みたいに人によってはクリスチャンネームが本名になっているのだろうか? と思った。実際には、このあとアイルランドで会ったほぼすべての中国人がイングリッシュ・ネームを名乗っていて、本名は別にあるということがすぐにわかるのだが。なお何年も経ってから、中国では学校で英語の授業が始まると、自分か先生が決めた英語名を英会話用の名前として名乗り始める、ということを知った。

そしてクリスティーナの自己紹介。24歳イタリア人、ということの他、ミラノ大学で美術を学んでいるが、現在休学している、と言うことが明かされた。そして最後に「Welcome!」と筆者とハナさんに笑顔を向けた。筆者もテンションが上がっていたので、隣の席のクリスティーナに「Thank you!」と大きく答えた。そして先生のケイトも「Thank you everybody」と言いながら自分の自己紹介を始めた。

「I'm from England」

イングランド人…なんだ、アイルランド人じゃないのか。ホストファーザーの時にも思ったが、イギリス人でも現在は平気でアイルランドにやってくるんだなあ、と改めて思った。そして、英語の本場中の本場、イングランドの英語を学べるのだと思うと嬉しくなった。ところが、レッスンはこのような感じで推移した。

「○○について、ふたり一組になって、ディスカッションしましょう!」

まずケイト先生が話題を出してきて、それについてどう思うか、隣のパートナーと英語で語り合え、というもの。突然のことでびっくりする。まず話題を理解して、自分の意見を考えて、それを英語で言うのだから大変だ。さっきまでのオーラルテストとか、自己紹介はまだ予想できたから良かったが…
この時いやがおうにも気付かされたのが、自分の英語が「対応型」だということ。質問に返事するのはまあなんとかできる。しかし、自分から話すことがほとんどできない。そもそも「英語で語りかける」時にExcuse meくらいしか使ったことがない。日本で英語教育を受けると受け身になってしまうというが、歴然とした証拠だった。

それに引き換え、クリスティーナの話すこと話すこと。ゆっくり、はっきりとした発音でわかりやすいのだが、あまりにも長過ぎて途中でわからなくなってしまうことがあるくらいだ。そんなわけで、やっと話し終わった時にこちらが返事を考えるのが難しく、向こうがまた話しだしてしまう、ということが相次いだ。会話になってないじゃん。

そんなことを繰り返している間に初日のレッスンは終了。惨憺たる有様だった。今でこそ言えるが、英語力もさることながら、クリスティーナのみならずイタリア人・スペイン人全般の「話し方のルール」を理解していなかったのが失敗要因である。そのルールに気付く日が意外と近いことは、当時の自分は全く知らない。

(続きます)
次回:初放課後

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KaoriNG

初授業の緊張感と、期待感、そして、自分の英語に対するちょっとガックリした気持ち、しっかり伝わってきます。

私も、そうだったなぁ~と思いながら、読みましたよ。

日本人って、やっぱり会話が弱いですよね。日本の英語教育では、なかなかポンポンと会話が出てくるというのは、難しいと私も実感しましたよ。

私のクラスは、北米なのでヨーロッパの人は少なかったですが、代わりにメキシコやコロンビア、アルゼンチンなどの人が多かったです。中国系の人は、やっぱりどこでも多いですね。
by KaoriNG (2010-05-20 09:58) 

管理人K(3X歳)

>>KaoriNGさん
コメントありがとうございます。やっぱりKaoriNGさんもそうでしたか!

やっぱり日本の学校英語は「書かれた質問に日本語で答える」のが基本スタイルだから、どうしても会話、しかも自分からというのは苦手になってしまいますね。

でも…
大学でネイティヴの先生が現れるまでろくに英語の勉強をしていなかったので、それがプラスになったと思います(爆)

そちらは中南米の人が多かったんですね!
あの人たちはこちらのイタリア・スペイン勢と似てますよ〜。たぶんこの先「そうそう、そうだよね」と思われることがあると思います。

中国の人々は…
実は当時、大問題になっていたのでした…
これもあまり気が進みませんが乞うご期待を…(冷汗)

by 管理人K(3X歳) (2010-05-20 22:07) 

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