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I hate English! と叫べるか [英語留学(ダブリン2000)]

2000年1月18日(火)
何かが近づいている。今朝最初に気付いた。英語がうまく話せなくなっている。それだけじゃない。英語が話せないという表面的な現象の他に、もっと大きな別なものがあると感じる。あのマーク・ピーターセンが日本語の辞書を放り投げた時のあれ、あの精神状態になりつつある。そのはずなのだ。

いつものように起きて、身支度をして、ホストファミリーに挨拶する。あれ? なんかおかしいな。

朝食を採って、ランチをもらって、そしてバスに乗って学校へ行く。そして学校で友達と話していると、また何かがおかしい。

レッスンが始まるともう完全にはっきりした。ごまかしようもないくらい明白だ。英語が話せなくなっている。

英語を忘れているわけではない。他人が何を言っているかはわかるし、テキストも読める。しかし、なぜか昨日までのように話せないのだ。寝ている間に何があったのだろうか? 昨日のテストと関係あるのだろうか? 

内心で焦りながらもなんとか次々と出てくる課題をこなす。クリスティーナには気付かれていないようだ。ひょっとしたら気のせいなのか? いや、そんなわけはない。言いたい事が言えない、というより、言っても上手く形にならない。頭の中にある英文は大丈夫なはずなのに、それが口から出る時に歪んでしまう感じだ。なんだこれは?

日本語で言うとスランプ、だろうか。
いや、ダメだ、「スランプだー!」などと叫んではいけない!
「どうしよう」とか「もうダメだ」もダメだ!

ここは日本語で叫ぶところではない

留学前に読んだあの本にも書いてあったじゃないか。

「私は、和英大辞典を壁に放り投げ、研究室の窓を開けて「日本語が嫌い」と叫んだことがある。恐ろしいことに、それは、日本語で叫んだのである。かなり夢中になっていて、かなり頭がおかしくなっていたので、日本語に関しての不満を日本語で言ってしまった。これは、自分からいうのはおかしいが、そういうような精神状態を読者にも薦めたいと思う。“read, read, read”の上にさらに“write, write, write”のあまり、フラストレーションが高まってきて、頭がおかしくなり、“I hate English!”とつい英語で叫んでしまうくらい、英語の「頭脳環境」に入ってみてほしいと思う。」
(マーク・ピーターセン『日本人の英語』1988、岩波新書、p. 9)



というわけでここはこれだ!


I hate English!!
(俺は英語が嫌いだ!)


いやちょっと待て、「つい英語で叫んでしまう」のが推奨されているのだから、考えてから叫ぶのはなんか違うはずだ。

それに、実際英語自体は嫌いになってない。嫌いなのは、頭の中の英語がうまく口から出てこなくなったから…

ということはこうか?


I hate my mouth!!
(俺は自分の口が嫌いだ!)


むむ、いや、なんか違うぞ。
口そのものが原因ではないと思うし…

じゃあこれでどうだ!


I hate myself!!
(俺は自分自身が嫌いだ!)


いやいやいやいや


それは、ダメだろ
たとえ本当のことでも、自分で自分に言い聞かせる性質の台詞じゃない。生きる気力自体なくしてしまいそうだ。

いろいろと自問自答したが、結局「What should I say?」(なんて言うべきだろうか)と心の中で何度も繰り返すだけの筆者であった。周囲に人気がないときは実際に言ってみた。まるで念仏を唱えているかのようだっただろう。

気付いたら学校を出てバスに乗り、シティセンターに居た。足はテンプル・バー方面に向いている。行き先はバックパッカー向けのホステル、キンレイ・ハウス。去年会ったベルギー人、ピーターから、ここで働いているというメールをもらったから、ひょっとしたら会えるかもと思ったのだ。いま考えると完全に現実逃避モードだった。

(続きます)


日本人の英語 (岩波新書)

日本人の英語 (岩波新書)

  • 作者: マーク ピーターセン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1988/04
  • メディア: 新書




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